行政によるヘイトデモ規制: 日本型の社会統制の一例として

Löschke A (2023)


Publication Language: Japanese

Publication Type: Journal article, Original article

Publication year: 2023

Journal

Book Volume: 74

Pages Range: 115-141

URI: https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/jss/index.html

Open Access Link: https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/jss/index.html

Abstract

 極右活動家によるヘイトスピーチを伴うデモ,いわゆる「ヘイトデモ」を規制するために行政がとる予防的措置,抑止策は日本で大きな効果を上げている.国の法律はヘイトスピーチに刑罰を科していないものの, 日本においてヘイトデモは急速に減少している.日本におけるヘイトデモ規制はなぜ,そのような効果をもたらしたのか.日本におけるヘイトスピーチ規制は主に法学分野で論じられているが,日本の行政がヘイトデモを規制するために様々な措置を講じてきたことはあまり注目されていない.よって本稿は,ヘイトスピーチ解消法(2016 年)の施行に焦点を当て,極右活動家に対する行政の対応を,強制力を行使せず,いわば「ソフトな」方法を用いる日本型の社会統制の一例として検討する.日本型の社会統制とは,「社会の和」を乱すと思われる活動を直接禁止するのではなく,そうした活動を企てる人々を萎縮させたり,思い止まるよう説得したりして,抑止しようとするものである.ヘイトデモを規制するための措置も,そうした抑止策が中心で,公共空間で許容される言動に関して都道府県警察,地方公務員,極右活動家が事前に一定の合意を形成することによって実施される.本稿は,極右活動家と,路上でヘイトスピーチに反対する「カウンター」行動参加者双方への日本社会の対応が,「社会の和」の概念と同根の概念である「喧嘩両成敗」の原則に基づくことも明らかにする.喧嘩両成敗とは,喧嘩の原因や正否を問わず,当事者双方を処罰するという原則である.ゆえに,日本におけるヘイトデモへの対処の仕方は,規制の方法と,その根底にある価値概念の観点から見て,従来のアメリカ型の規制ともヨーロッパ型的規制とも異なる.

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How to cite

APA:

Löschke, A. (2023). 行政によるヘイトデモ規制: 日本型の社会統制の一例として. Shakai kagaku kenkyu (The Journal of Social Science), 74, 115-141.

MLA:

Löschke, Ayaka. "行政によるヘイトデモ規制: 日本型の社会統制の一例として." Shakai kagaku kenkyu (The Journal of Social Science) 74 (2023): 115-141.

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